割り箸
たくさんの人。男も女もいたが、女の方が多かった。そこは僕の家だったが、彼女らはなんでいるんだろう、ダイニングに、居間に、寝室の僕のベッドで鼾をかいているやつもいる。風呂に入っているのもいる。
僕は海外旅行へ出かけるところだった。スーツケーツに、必要なものを詰めていく。バスルームに入っていいだろうか。「だめに決まってるでしょ」と声がした。「歯ブラシを取りたいんだけど?」
何とか荷造りは終えた。出発だ。すると玄関の扉の向こうから、歌が聴こえてきた。外を見た。タキシードの男の人がいて歌っている。
「僕のために歌ってくれているの?」違うのか。違う‥‥。
「あなたにこれを」と彼は僕に割り箸をくれた。
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