パンを焼く
自宅に遊びに来た友人をもてなすためにパンを焼くことにした。あとはオーブンで焼くだけのパン生地をその友人は持参してくれた。
あいにくウチにはオーブンがない。
しかしコタツを指差し何か言いたげな彼女を見て、
「そうか」
これが使えるよね。
「時間はかかるかも知れないけど‥‥」
僕たちはバルコニーに出た。家のバルコニーは1つの町ほどの広さがあり砂浜までつづいている。金網のところまで歩くと緑色の柵の向こうの灰色の海に雨が降っているのが見えた。
「ねぇこの間の台風のときはどうだった?」と彼女は訊く。
「波は今日ほど高くなかった」
「波のことを訊いたんじゃないのよ」
「うん‥‥」
わかってて言った。
金網が一部破れているところを見つけて、彼女は
「ここから外に出れなくない?」
実際、犬が1匹入ってきて出て行った。白い大きな犬が。
「針金にひっかかって怪我するよ、やめた方がいい」と僕は警告したのだ。
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