味の素
注文した料理がなかなか来ないので厨房を覗いてみると料理人の1人が倒れていた。病気か。仕方ないので自分の分は自分でつくろうと思ったがオーダーは溜まっている。
他の2人の料理人は新米のようで僕が仕切るしかないようだ。「安心して休んでください」と僕は倒れた料理人に声をかけた。「厨房は僕が守ります」
自分の分は後回しにしてオーダーを捌いていった。僕の調理法は簡単で「味の素」で味を整えるだけだ。最後に残った女性の1人客のテーブルに僕は自分でパスタを持っていった。その女性は「とてもおいしい」と言って泣いたが、泣いたのは料理のせいではないだろう。
閉店したあとに僕はやっと自分の料理をつくることができた。大盛りにしたが許してもらえると思う。そのときにはもう食欲がなくなっていたが、レストランのいちばんいい窓際の席に座って時間をかけて食べた。窓からは夜の港が見えてロマンチックだった。
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