自転車
家の中で自転車を押して寝室まで行った。真っ暗な部屋の隅に自転車を置いた。置くときにガチンと音がして、自転車の周辺がほんのり明るくなった。
昼間だったが彼女はもう寝ている。夜になったら起き出すのかどうかわからない。いちど目を覚ますくらいはするだろう。そのとき自転車を見れば僕が来ていることに気づくはず。(大きな赤い自転車だ。)
僕は寝室を出てキッチンに戻った。壁の一部が透けて外が見える。デパートが並ぶ大通りで、車道が歩行者天国になっている。色とりどりのアドバルーンが浮いている。スマホを向け写真を撮った。しかし写っていたのはただのキッチンのクリーム色のタイルの壁だった。
僕は本物の窓を探した‥‥それは彼女の眠る寝室にあることは知っていた。外へ出る扉も寝室にある。扉の前にベッドがあり、彼女は眠っている。
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