ジャズ・バー
トイレに行列ができていた。女だけでなく男も並んでいるのを、珍しいなと思い横目に通り過ぎた。しかしそのあとで、僕もトイレに行きたくなった。
引き返してみると、行列は消えていた。そこはトイレではなくジャズ・バーだった。「トイレの中でジャズが聴けるんですか?」と訊ねる僕を、従業員が馬鹿にしたような目で見た。
案内された席にはパンが2つあった。ペットボトルに入った白ワインがあり、ワイングラスではないグラスが用意されている。僕は酒は飲まない。パンもよく見ると一口だけ齧ってあった。僕はそのパンを皿ごと後ろのテーブルに下げた。
その席に若いカップルが案内されてきた。カップルは食べかけのパンにかぶりつき、ワインをがぶ飲みした。そうして金も払わずに出て行く。請求書は僕のところに回ってきた。
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