演習
研究所に彼らがやって来て爆弾をあちこちに仕掛けていくのを、何もせず僕たちは見守っている。それは「演習」だった。
彼らが引き上げたあとで爆弾の撤去に取りかかった。仕掛けられた爆弾はリンゴのかたちをしていて、それを僕たちは1つずつ透明なビニール袋に入れ持ち寄った。
ビニールに入れるのは爆発したあとで飛び散らないようにするためだ。
「本当に爆発するんですか?」若い研究員の1人は馬鹿馬鹿しくて仕方がないといった様子である。
「というかマジで爆発するんだとしたら、ビニールで飛び散りが防げるわけがないでしょうに」
「お前はあれだ、コロナのときも、マスクで感染が防げるのかと嘲笑っていたクチだな、隠謀論者か」
「あぁわかりました‥‥わかりました、やりますよ」
それからはもう誰も何も言わない。やがて箱いっぱいになったリンゴを先程とは別の「彼ら」が来て回収していくまでは。だが予定されていた時刻はとうに過ぎてしまった。
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