指
その女が逃げたから僕は追いかけた。僕が追いかけたからその女は逃げた。どちらなのかわからないが、僕がつかまえたからその女はつかまったのだ、僕に。
僕は女の手袋を脱がせた。彼女には指が1本もなかった。ドラえもんのような手をしていた。「指をどこにやった?」と僕は問いつめた。
「手袋を返しなさいよ」
「指の在処を教えろ、そうすれば‥‥」
「指なんかないわ」
そこで僕の同僚が追いつき、女に手錠をかけた。「指を返してやれ」と彼は言った。
「これは指じゃない、手袋だ」
同僚は「‥‥削減」という言葉を口にしたかも知れない。しなかったかも知れない。
「いいから返すんだ」
手袋はいつの間にか真っ赤に染まっている。
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