弁護士
弁護士はたいへんな美青年だった。そのせいで僕はからかわれているような気持ちになった。どうしてこんなハンサムが、ハタチそこそこで弁護士になれるというのだろう。ドッキリか何かに決まってる。
僕は隠しカメラを探した。どこで撮影しているのか。だが彼はハタチではなかった。50を越えていた。二枚目ふうの前髪をかきあげながら「見た目で誤解されてしまうことが多いのですが‥‥」と言う。
「卑怯者?」
「えっ?」
「えっ? あぁ聞き間違えました。言い間違えたのかな‥‥」
「弁護士を雇った覚えはありませんが」と僕。
「弁護士ですって?」
「えっ?」
「えっ? それにしても本当ですか‥‥?」
法学部の学生たちが司法試験に落ちた。試験問題と回答は事前に教えてやった。それでも全員が落ちたのである。
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