傘
電車に乗っているとき、雨が降ってきた。僕は傘を持っていた。傘を持っているのは、僕1人だった。
雨は、ますますひどくなった。
しかし途中の駅から乗ってきた乗客も、誰1人傘を持ってない。
それは、環状線だった。1時間ほど乗っていると、最初に乗った駅に着く。僕はその駅で降りた。
改札を出ようとすると、駅員に注意された。「その傘を持ち出すことはできませんよ」
「なぜですか? これは僕の傘ですよ。外はひどい雨なのに‥‥」
とにかくだめなのだ。傘は駅で預かるという。次に乗車するとき、返してもらえる。
「本当にどうしてなの? 乗車するときに返してもらったところで、電車の中で傘は必要ないでしょう」
「必要ないのなら、駅でずーっと預かっていることもできます」
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