完全試合
完全試合まであと1人。最後の打者も2ストライクまで追い込んだ。
ここは1球遊ぼう。アウトコースに外して、打者の打ち気を逸らそう。
僕はキャッチャーミットを、外角に構えた。しかし投手が投げた球は、内角のキワドいところに来た。何とかキャッチしたが、危なかった。判定はボールだった。
ミットにおさまった球を見て、しかし驚いた、それはジャガイモだった。ジャガイモは野球のボールではない。
幸いなことに、打者も審判も気づかなかったようだが‥‥
パーフェクトゲームどころか、反則負けになるところだ‥‥
僕はタイムをとって、マウンドに向かった。「どういうことだ?」ピッチャーを問いつめた。
「俺にも、わかんないよ‥‥」
「バレたら、一貫の終わりだぞ」
空振り三振を狙っていくしかない。
渾身の力を込めて、投げられた最後の1球。しかしバッターは空振りはしてくれなかった。バットにあたったジャガイモは、鈍い音を立て砕けた。
キャッチャー前に転がった、そのいちばん大きなカケラを、僕は拾い上げ、ファーストに投げた。
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