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2025年7月28日

 死者とチェス                                                                  

 

 彼女は注文していた宝石を受け取りに宝石店の中へ入っていった。そのまま何時間も出てこない。宝石は僕へのプレゼントだというが、僕は待ちくたびれてしまった。時間はまだかかりそうだ。

 

 周辺を散策して、時間を潰すことにした。

 

 しかし方向音痴の僕は道に迷ってしまった。

 

 

 

 彷徨い歩いていると、木を見つけた。「そうだ、あの木だ、あの向こうに宝石店はある」

 

 店などなかった。そこは死者とチェスをする老人が集まっている広場だった。

 

 老人たちは考える力を半ば失った死者に容赦なかった。死者たちはチェスに負けると蒸発するように消えていく。すぐに広場は老人だけになった。その中から1人の死者が足を引きずりながらこちらに歩いてきた。

 

 彼女はその死者に肩を貸しながら歩いている。黒い宝石を手に持っている。死者とは知り合いのようだ。「純ちゃん」と死者に呼びかけた。

 

「純ちゃん、紹介するね、この人が私の彼氏なの」

 

「よろしく」と僕は挨拶した。

 

「足を怪我してらっしゃるんですか?」

 

「何とか引き分けに持ち込んだよ‥‥」

 

 死者のその言葉を聞いて、彼女は涙を流した。

 

 

 

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