ヒャッホー
寂れた国道の脇を歩いて町に向かっていた。ときどき暴走族の車が「ヒャッホー」と叫びながら僕を追い越していく。
そのたびに僕はタイムスリップして我が家に戻っていた。夕食の時間だった。母がどこかで買ってきたお弁当があり、冷蔵庫の中にはケーキとチョコレートとジュースが入っていて、それらは食後のデザートだ。
妹と僕は先にチョコレートを食べようとする。そうすると夢は終わり、僕はまた1人で国道の脇を歩いているのである。夜中だった。
そうやって食事を逃すたびに空腹になる。
ついに歩けなくなった。道端にうずくまる。
また「ヒャッホー」がやってくる‥‥
‥‥
だが今度は違った。思い出していた。鍋の中にカレーがあり、炊飯器の中にはご飯が炊きあがっていることを。
妹を呼びに、2階に駆け上がった。妹はベッドに寝転び、ケーキを食べている。
「なによ、お兄ちゃん‥‥」 もう手遅れだ。
母親が帰宅した。僕よりも若い母だ。彼女が「お母さん、喉かわいちゃったな」と言いながら、冷蔵庫の中のジュースに手を出すのを、僕は泣きながら止める。「みんな、どうしちゃったんだよ。これは最後のチャンスなんだぞ」と言って。
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