2008年8月19日

真昼の夢

「このおもい真昼の夢と誰か云う‥‥」


 与謝野晶子のこの歌の下の句が思い出せない。


 空想の相手とする空想の会話も、こうして事務的なものになっていく今。


 上の句はたぶん忘れられない。


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2008年8月14日

 午前2時半に雷が落ちた。怖いとは思わなかった。観光客も英語で「あなたがこれぐらいのことで死ぬとは思わない」と言ったような気がするから。原爆ドームの前で。


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2008年7月29日

ありがとう

 日本には、ずいぶんと沢山の中国人がいる。若い女はみんな美人だ。けどあっという間に年を取る。日本人女性の3倍のスピードで老けていく。


 僕は中国語ができない。中国人の恋人がいたのに。僕が知っている中国語は、単語を3つだけである。こんにちは、ありがとう、大好き。美しい彼女たちに、僕はそれしか言わない。僕はものすごくモテる。


 知り合いの美人の中国人が、さらに美人の中国人と話している。こんちには、大好き、と僕は声をかける。「何話してるの?」


「あなたのこと大好きーって」


 ありがとう。笑顔で、彼女たちも僕には、それしか答えないが、いいのだ。中国人にモテると思いこんでいる。


 猛烈な勢いで学び、さらに過激に働く。彼女たちの言葉を、僕はゆっくりと忘れていく。


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2008年7月22日

ヒューストン、ヒューストン、聞こえるか?

 言葉で話すのではなく、僕は言葉に話す。僕は言葉と話す。


 人に話しかけるようにして、言葉にも話しかけてみる。そうすると言葉は語り出す。


 言葉が語り出す、その話に耳を傾けている。


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もし言葉がなかったら

 もし言葉がなかったら、僕は寂しくなると思うよ。人と話せなくなる、それだけじゃなくて、自分と対話することもできなくなる。


 言葉の通じない物に話しかける言葉が、なくなってしまう。ボールペンや枕に話しかけることも、できなくなるのだ。僕は、ひとりぼっちだと思う。


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2008年7月 5日

ワシントン

 バス停にホームレスがいたけど、いないことにした。バスを待つ僕たちみんなで。ひどい臭いだったけど、ひどい臭いじゃないことにして、思い出したりしていた。本当のことを。


 そうあの日、大統領になろうと思い、桜の樹を切った。言うのを忘れてた。あの樹は、僕たちが切った。大統領は嘘つきだ。


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2008年7月 1日

不可欠な人間

 人間に価値はない。必要な人間はいる。不必要な人間はもっといる。しかし価値のある人間はいない。


 それが僕の価値観だ。僕の価値観にも価値はない。とここまではいい。


 その価値観が僕の価値観であるためには僕が必要だ。僕が支えている。僕は不可欠だ。


 けど僕に価値はない。でも僕は必要とされている。僕にその価値はないという価値観から。


 上手く丸めこまれている。そんな気がする。とても上手く。


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ドアノブ

 僕はこの仕事が大嫌いだが、僕に他の仕事はできない。そこは誤魔化したくないと思う。そこから逃げたくないと思う。そう思って僕は目覚める。毎朝。


 自分で自分を憐れむことの卑しさをも自分に許す。毎朝。


 人は卑しい、人は憐憫に値すると書き、男がドアノブで首を吊って死んだ。それでは何もわからない。


 テレビでは「大物」の芸人が、自分の言葉に自分で笑っている。


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2008年6月24日

処分

 左腕のないOLと一緒にお墓参りに行った。その若さで彼女は墓を持っていた。左腕を埋葬するための小さなお墓。


 左腕のないOLが僕を見て、左足のないホームレスの話をした。ホームレスは墓を持っていない。足は埋葬されなかった。「処分」されたんだよ。


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